『勇士の戦うとき、剣の力よりも勇気のほうが大事だ』
……エッダより「ファフニールの歌」

 ソウルエッジへとつながる手掛かりを求め、以前訪れた地へと向かったカサンドラ。だが、その邪気に包まれた街は近隣の諸侯達による連合軍によって包囲されていた。戦いによりすべてが灰になってしまうことを恐れたカサンドラであったが、彼女の前に現れたのは落ち延びていく兵士達だった。諸侯の軍勢は敗れたのだ。何かに取り憑かれたように見境なく暴れる街の住人達。その狂気を統べる剣士の存在を、カサンドラは敗残兵から聞き出した。
 夜道を急ぐカサンドラの前に、一人の男が現れる。男の眼は赤く染まり、あの街で感じた威圧感を凝縮させたかのような視線がカサンドラを見据えている。彼女が手にした武具が熱を発し、目の前の人物が魔の領域に属していることを告げる。件の剣士に違いなかった。
「感じるぞ……貴様、ソウルエッジの一部を持っているな?」
 カサンドラはぎょっとした。なぜ、そんなことを知っているのだろう? 男は身に羽織った外套の内側から細身の剣を抜く。
 瞬時に繰り出された切っ先をかろうじてかわすカサンドラ。激しく刃を合わせた後、防戦一方だった彼女はついに一撃を加えることに成功する。男は屈辱の表情を浮かべたが、それはすぐに歪んだ微笑へと変わった。カサンドラが続けて放った攻撃をいなし、男は身をひるがえす。宙に浮かんだ外套が月光をさえぎり……そこにはもう誰もいなかった。
 ――聖石とまではいかぬが、破邪の力を持っているとは……面白い、今は生かしておいてやろう。
「逃げるの!? 卑怯者っ!」
 ――フッ、笑わせてくれる……邪剣の欠片はいただいたぞ……。
 どこからか響く男の声に、ハッとして懐を確かめる。ソウルエッジの欠片はなくなっていた。

 完全に手玉に取られ、いっときは冷静さを失ったカサンドラであったが、すぐに気を取り直して街へと向かった。狂気に支配される街の者から身を隠して行動していた彼女を待っていたのは、予想もしていなかった発見だった。正気を保つ住人達がいたのだ。彼らはこの地から逃げようとしていた。
 彼らを護りながら、呪われた街をあとにしたカサンドラ。道中話を聞けば、一度は狂気に縛られたものの「青く輝く結晶」を持つ旅の男女によって癒されたという。カサンドラはあの剣士が口にした「聖石」という言葉を思い出した。その結晶ならば、邪気に対抗できるに違いない。もしかしたら、ソウルエッジを打ち破ることもできるのではないだろうか……?

 安全な地で彼らと別れたあとも、「聖石」について調査を続けるカサンドラ。例の男女を追いはじめた彼女であったが、その足取りを掴むことはできなかった。まるで彼女を拒むように、ある時突然手掛かりはなくなってしまったのだ。
 これ以上のことは何も分からないと思われた時、カサンドラはある噂を耳にする。身の丈ほどもある結晶塊を持つ人物がいるというのだ。その男はその青く輝く石を携えて、オストラインスブルクを目指しているらしい。
 オストラインスブルク……その悪名高い廃城のことは彼女も聞きかじってはいた。だが、一体そこに何があるというのだろう? もしも男が持つ結晶塊が邪に対抗する存在であるのならば、廃城にはそれ相応の悪しき存在がひそんでいるに違いない。まさか、ソウルエッジが……!?

 魔都オストラインスブルクを目指すことを決めたカサンドラ。邪剣に翻弄される姉の助けになりたい。その一心からソウルエッジを巡る戦いに身を投じ、徐々に核心へと近づきつつある彼女の動機。それは強く燃え上がる、ソウルエッジへの怒りの感情だった。


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