『見よ、山々ふみしだき、城壁も武器も砕くあの尖り尾の獣を!
見よ、全世界を汚染するかのものを!』
……ダンテ「神曲」

 ……誰ダ? 我ヲ呼ブノハ……?
  人の言葉にするならそのようなことを呟き、「ソレ」は己の意識を探った。
  何も見えぬ。確かに聞こえた呼び声の主を求め、沈黙を守る幾千、幾万もの魂の深淵を覗き見る。確かに何者かが内から語りかけてきたのだ。古き記憶の断片をかすめ、何かを思い出しかけた瞬間、「ソレ」の意識は不意に引き戻された。そして突然、眠りは破られる……!

 ソウルズ・エンブレースとして霊剣ソウルキャリバーと絡み合い、黙していた邪なる意識は、絶境の大聖堂で行われた秘術によってなかば強制的に揺り起こされた。双極の剣が秘めた力を見誤った魔術師は、その力に呑まれて時空の彼方へと消え、「ソレ」はみずからの分身たる蒼騎士の手に収まる。相対するは同じように解き放たれた霊剣を手に立ちふさがるかつての傀儡。二人の剣士は己の魂と存在をかけ、武器を合わせた――。
  永い間にわたって力を増し続けてきたソウルキャリバーとソウルエッジは大聖堂を土台から激しく揺さぶり、解き放たれた破壊の嵐は一帯を駆け巡った。その波動はすさまじく、ついに天変地異を呼び寄せる。かりそめの躯しか持たぬナイトメア。そして生身の人間であるジークフリート。両者はともに、剣から溢れ出る力の奔流に耐えきれなかった……。

 崩れかけたナイトメアとともに、歪んだ空間へと堕ちたソウルエッジは、傷付きながらも力を求めた。ナイトメアを形作っているのはオストラインスブルクに宿る怨念と地霊であった。邪剣はその不浄な気を辿ることで、みずからをかの廃城へと導くことに成功する。

 瘴気渦巻く玉座にうずくまる蒼き鎧の残骸。ソウルエッジは傷付いた傀儡へと、邪気の「根」を伸ばす。霊剣との邂逅が生み出した余波は世界中に広がり、各地に散った邪なる破片を呼び覚ました。大小様々な金属片が数多の光の粒となって、オストラインスブルクに雨と降り注ぐ。その中には、生物との中間にまで達したものや、かつて砕かれた半身たる一振りの剣もあった。数年前にイヴィルスパームとして世界中に散ったソウルエッジの力が再び集い、邪剣はそのすべてを飲み込んでいく。数十年の時を経て、ソウルエッジは完全に一つになったのだ。
  それだけに飽き足らず、邪剣の「根」は生命宿らぬ依代に下ろされたまま、ソウルエッジと復活したナイトメアを強く結びつけていく。地霊と怨念から構成されていた躯は、すでにソウルエッジの邪念そのものへと変貌していた。

 やがて邪気の波動を辿り、ソウルエッジの使徒達がオストラインスブルクへと集結してくる。今やソウルエッジの「根」は蒼い甲冑の内に収まりきらず、この因縁深き地に深く食い込んでいる。魔都と化したオストラインスブルクは、邪剣をより強く練り上げるために優れた魂を喰らう「器」となったのだ。

 邪なる剣は災禍の中心たるオストラインスブルクの玉座で、霊剣ソウルキャリバーと再び相まみえる刻を待つ……。


▲ページTOPへ


【ご利用規約】