『胸の内に湧き起こる衝動こそが、運命の声なのである』 ……シラー
彼は天を仰ぎ見た。ひときわ明るく輝く満月が、選ばれた者として彼だけを照らしている。 暗い森の奥深くで、彼はその大いなる目的に到る道をついに見つけたのだ。その鍵は、かつて求めたソウルエッジや、破邪の力を持った「聖石」などよりもはるかに強力な力だった。遠い過去から幾度となく邪剣ソウルエッジを食い止めてきた霊剣ソウルキャリバー。その力を用いれば、完全なる世界を創り出せるに違いない!
ラファエルにとって、エイミはすべてだった。彼は世界の一切をイヴィル化することで、エイミのための世界を用意することを画策した。しかし「聖石」と呼ばれる石の力のために、彼の計画に綻びが生じる。手始めにイヴィル化させた街の住民の一部が正気を取り戻したのである。イヴィル化とはソウルエッジの力が生み出す現象……つまり、ソウルエッジの力を超える何かが存在するのだ。ソウルエッジに頼っては目的を達成することはできない。新たな道を見つけなければ……! 街を取り囲んでいた軍勢を一蹴すると、彼は新たな力を求めて夜の闇へと消えていった。
「聖石」やそれに類する破邪の力を探りながら彼の旅は続いた。ラファエルはしばらく市井の噂を辿っていたが、やがて見切りをつけた。人々はその日その日を生き抜くのに精一杯で、とても彼が望む力を知っているとは思えなかったのだ。次に彼は土地から土地へと流れる民に近づき、街では手に入らぬ情報を広く求めた。さらにラファエルは己の領域へと足を伸ばす。街を追われ夜の森に生きる者ども。人知を超えた力を持つと恐れられ、疎外された存在。魔に近しいが故に、ここ数年におけるソウルエッジが及ぼした影響は大きいと思われた。彼らならば何か有益な情報を掴んでいるに違いない。 以前から集めていた邪剣の欠片がここで役に立った。破片を餌にして、時には力にものを言わせながら、ラファエルは核心へと進んでいく。そして、彼はとうとう見つけたのだ。はるか昔に滅んだ一族の末裔を。みずからを「霊剣を守護する一族」と称するその者達は、自分たちが歴史から忘れられていることを恥じ、再び世に出ることを願いながら細々と暮らしていた。望みは高くとも血筋を残すことに精一杯の彼らは、すでに霊剣を失って久しかった。しかし彼らは、その伝承だけは守り続けていたのだ。邪剣ソウルエッジに対抗するための剣、霊剣ソウルキャリバー! それこそラファエルが求めていた解答に他ならない! 狂気をはらんだ笑みが浮かび、ラファエルの剣が朱に染まる。もう彼らに存在理由はなかった。これからは自分が霊剣の力を受け継ぐのだ。密かに生きてきた一族が、その役目を終える。彼は夜空を見上げ、妖しく濡れる満月を仰ぎ見たのだった。
美しい夜空だった。幸福の余韻に浸る彼の視界を幾条もの光が流れていく。光が消えた方角を見やり、ラファエルはその果てに何があるのかを思い出した。かつて邪剣と相まみえた地、オストラインスブルク……。星の間を縫うように走る光の帯から、確かに感じられる邪気。その正体を彼は知っていた。あの場所で、ソウルエッジが復活しつつあるのだ。邪剣の力を封じ込めるのが霊剣の宿命ならば、ソウルキャリバーもまたオストラインスブルクに現れるのが必然だろう。 月の光を浴び、ラファエルは笑いだした。エイミのための完全なる世界を創り上げる。邪剣に群がる者どもなど、問題にもならない。満月の側で光を放とうとする分をわきまえぬ星々は、霞んで消えるさだめなのだ!
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