武器 【 雨月 影打
 抜刀術を極めた男は、御剣平四郎との決闘の末に命を落とした。その際、愛弟子である雪華に遺した一振りの刀。復讐を誓い、師が残した着物に身を包んだ雪華は、その想いが漏れぬようこの刀をとある刀工へ持ち込んで仕込み刀とし、己と同じく艶やかな衣でその刃を覆い隠した。
 影打とあるように、真打が存在する。作製した刀鍛冶の名は不明。

 

流派 【 神伝対馬流抜刀術
 名のごとく、神から伝えられたという抜刀術の一流派。しかし当時抜刀術が成立しつつあったことを考えると、これは流派の格付けのための作り話であろう。
 その発祥はあくまで暗殺剣であり、刀を抜き放ち、斬るまでの時を極限まで短縮するという思想も、一撃必殺が要となるその目的故であった。剣技や型の呼称に当時の流行りからは外れた古歌の文言を用いたのも、単なる風流というよりも、裏の顔を秘匿するための工夫であったのだろう。
 雪華の師はかつて「九重舟元」の名を持ち、ある武家に仕えて汚れ仕事を受け持つ家系にあったが、誅殺の命を下す大名や御家人自体が腐敗していることに強い疑念を抱き、義憤のまま家を捨て、名を捨てて出奔した。彼はあくまで剣の道に生きることをよしとしたのである。
 だが、その事実を弟子である雪華にあえて語ることはしなかった。かの抜刀術を純粋な剣技として学び取った雪華にとって、それは師との絆であり、生きることの証でもある。師が生前から認めていた彼女の腕。仇討ちのために研ぎ澄まされた雪華の剣は、よりいっそう鋭さを増していく……。





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