『真に黙することのできる者だけが、真に行動することができる』
……キルケゴール「現代の批判」

 過ぎたる力は、その正邪を問わず惨事を呼び寄せる。
師を狂わせ、人外の存在へとおとしめたソウルエッジを追ったタキ。彼女は各地で邪剣の欠片を浄化して回り、ついに絶境の大聖堂へと辿りついた。ソウルズ・エンブレースを目の当たりにしたタキは、その気の流れから邪剣に対抗しうる霊剣の存在を知った。
双極の剣の解放、そしてジークフリートとナイトメアの戦いを見守るタキ。だが彼女が望んだ結果がもたらされることはなかった。ソウルキャリバーとソウルエッジはお互いを打ち消し合うどころか、それぞれに力を増幅させ、ついには天変地異をも引き起こしてしまったのである……。

 あらゆる力と技を駆使し、崩壊する大聖堂からかろうじて生還したタキ。彼女は確信していた。霊剣もまた、危険な存在であることを。大聖堂は崩れ去ったが、ソウルキャリバーもソウルエッジも消滅してはいない。あの恐るべき二つの力は、今もお互いに共鳴している。……両者は個別に葬らなければならない。万が一にも再び引き合わせてはならぬ。
 間近で力の奔流を感じたためか、妖刀滅鬼丸の放つ邪気が強くなっていた。愛刀裂鬼丸もソウルエッジの力が徐々に高まっているのを感じ取る。それらの反応から、ほどなく彼女はソウルエッジがオストラインスブルクの地にあることを突き止めた。ついでジークフリートがオストラインスブルクへと向かっていることを知ったタキは行動を開始する。もう時間がない……! しかし、一人の男がタキの前に立ちふさがった。

 男はナイトメアこそがジークフリートその人であるという事実を知っていた。真実を知りながら、彼はジークリートを人間として信じていた。友が過去と決着をつけるための戦い……その障害になると考えたのだろう、彼はタキの行く手に立ちふさがったのだ。男は善く戦ったが、滅鬼丸の一撃の前に地に伏せるよりなかった。
 「貴様があの場に間に合っていれば、奴も人の身を保てたやもしれぬ。……いや、今更論ずることではないな」
彼女はあえて止めを刺さず、瘴気立ち上るオストラインスブルクを目指し立ち去った。

 絶境の大聖堂で彼女は見ていた。荒れ狂う力の奔流に巻き込まれ、ジークフリートの身体が引き裂かれる様を。だが消え行くはずだった彼の魂は、霊剣の介入によって此岸に留められたのだ。ねじ曲げられた摂理のもと生きるジークフリート。はたして彼は、その身に宿る力を人間としての理性を保ちながら制御できるのだろうか……?
 いや、そんな危険な賭けには乗ることはできない。彼女は決断した。そこに情は一切無かった。ただ、揺るがぬ決意だけが存在していた。


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