2003.5.12




























■ 「ソウルキャリバーII」特別インタビュー
家庭用オープニングムービー制作者に聞く

 

【出席者】

株式会社ナムコ ソウルキャリバーIIプロジェクト
企画 恩田 講氏
サウンドディレクター 中鶴 潤一氏

株式会社ビルドアップ
後藤正行氏
アニメ キャラデザイン担当として、「機神兵団」、「レッドバロン」等に携わった後、ビルドアップに所属。
『英語であそぼ!』キャラデザイン、OPムービー演出、CM「どキレイダ−!」(エプソン)デザイン等を手がける。

日下部 実氏
「カルドセプトセカンド」、「パンツァードラグーンオルタ」などのゲームムービー、雑誌、カードゲームのイラストレーションなどを担当。
現在ビルドアップに所属。

鈴木 朗氏
GONZO Digimationにて「青の6号」などの作品に携わった後独立。最近の作品は「仮面ライダー555」、オリジナル作品「A.F」など。

内山 奈保子氏
主にCM、アニメ、ゲームムービー等のラインプロデュースを担当。ビルドアップ所属。 

(以上、文中敬称略)


■ ギリギリのスケジュールでの共同制作

−−まず、オープニングムービーを作ることになった経緯を教えてください。

恩田 まず、プラットフォームごとに異なる3人のゲストキャラが登場するということで、「いろいろと工夫しなきゃいけないな」という理由がありました。

 私が最も心配したのは、3機種での発売がプレイヤーの皆さんを混乱させてしまわないかということでした。「『ソウルキャリバーII』って、どのハードで遊べるのかわかんないし、内容もよくわかんないから買わない」と思われてしまうのがとてもいやだったんです。ですので、機種の違いに関わらず、「これが『SCII』だ!」と自信を持ってお送りできるハイクオリティな「つかみ」のための映像がどうしても欲しかったんですよ。

 それから、「どうせ普通の格闘ゲームだろ……」って思われるのがイヤで……。「SCII」の重厚な世界観や登場キャラクターの魅力を表現する手段としても、絶対に必要だと思ったんです。

−−今回はなぜビルドアップさんとの共同制作という形になったんですか?

恩田 社内のスタッフは、皆ゲーム本編の開発に集中するため、ナムコ社外の方との共同制作で実現する必要がありました。

 しかし、オープニングムービーを製作すること自体が決定された時期が遅かったので、「そもそもお願いできるところってあるのか?」と、ちょっと困っていたんです。そこで、当時「チョコベーダー」の企画でお世話になっていたビルドアップ代表の岡部暢哉氏にお話してみたら、「できるかもしれない」というお話を頂いたんで、具体的な話を進めさせていただきました。

 ところが、まぁ、「実際にやりましょう」という話になってから、アーケード版の「Ver.D」とかいろいろあって、ブランクが開いたんで、実際作業に入ってもらったのは9月半ばくらいです。

内山 私が伺っていたのは、「(2002年の)ゴールデンウィーク明けには絶対始まるから」って。そうですね、春……3月、4月くらいですね。

恩田 もう1年になりますね……(笑)。そんな経緯で。

中鶴 ゴールデンウィークが明けても、まだアーケード版をばりばり作ってましたよね。ゴールデンウィーク明けに1曲作りましたもん(笑)。「このモードの曲がありません!」とかいわれて。

恩田 というようなギリギリの中だったんです(笑)。まず、待っていただいて、短くなってしまった期間の中で、「十数キャラを入れたムービーを作ってくれ」なんてお願い自体が、もうすでにおかしな話だったんですよね。

日下部 20キャラくらいいるんじゃないですか?

恩田 そんなに居ましたっけ? 結局ザコとかも入れると、それくらいになっちゃいますね。とてもじゃないけど、正気でお願いしてるような話じゃなくなってたんですよ(笑)。

 まず困難が目に見えてる状況から始まってしまった、始めから「フー」という感じでした。

−−キャラクターなり世界観なりは、全部ナムコで作られたものなんで、大変だったんじゃないですか?。

後藤 イメージが出来てるじゃないですか。こっちはまずそこに追いつくのが大変だったんです。結局シリーズをずっと作られてきてるわけですから、思い入れがいっぱいあって、それを受け止めて。でも、逆にイメージがはっきりしてたんで、やりやすかったですよ。

 こちらからの質問に対して、「こうです、このキャラはこういう性格です」ってすぐ返ってきたんで。だから、「こいつはこういう芝居はしないだろうな」というのはわかりやすかったですね。あとは、そのキャラが一番格好いいシーン、見せ方をチョイスして……というところだったんで、そんなに迷いはなかったですね。

恩田 分厚いキャラクターの設定資料、「まずこれ読んでください」って、ドンってお渡ししたんです(笑)。キャラクターそれぞれを細かく理解して頂いた上で作っていただきたかったので。その辺で、だいぶ違ってくると思うんです。

−−すり合わせの部分とかの、時間の問題とか。

恩田 そうですね。急がば回れじゃないですけど、すんごい回っていただいて。

−−資料の山を見て、最初、いかがでしたか。

後藤 だいたい、ゲームの資料って多いじゃないですか。特に今回は、キャラクターの数が尋常じゃないので、そして当然それぞれにいろいろ話があるんで。あとはどこをチョイスするかってところに尽きちゃったんですよね。それもある程度、恩田さんの方で「ここが格好いいと思うんです」って提案していただいて、こっちの方からは、「でも、それは見せられないですよ」といったことをすり合わせながらやっていった感じですね。

恩田 実際、頭の中にはシーンとして出来ていたんですが、どこを絵としてどう切り出すかというのは、私だけではできなかった。後藤さんに絵コンテを切っていただいて、これがベストというものを作ってもらいました。今考えると、かなりぼんやりしたものを絵コンテで明確にしてもらった感じでしたね。

後藤 でも、最初のイメージからはそんなに離れてないですよね。

恩田 絵コンテになると、私がイメージしてお願いしてたものと非常に近い形でした。

後藤 最初の頃に全体的な構成はできて、あとは音に合わせてこれをこっちにもってこようか、こっちにもってこようかっていう埋め合わせをやったんですが、それが今回は良かったんじゃないかなって思います。音の環境に、シーンを持っていくところがわりとうまくできたんで、面白かったですね。普通だと、音楽ができていない段階で、「とりあえずこんな絵コンテでいきたいんだけど」という話のあとに、音つけてもらうことが多いので。ちょっと今までとは違う方法論でできたので、面白かったですし、またそのお陰でいい感じになってると思います。

 最初にお話を頂いたときに、「『ソウルエッジ』のオ−プニングが、音と映像がシンクロしてて、当時としてはすごく良かったんだ」というのがあって、「やっぱりああいうのかねぇ」っていうところがすごくあったんで。今回は同時に出来るんだったら、そういうところも意識しつつ、やっていけたらいいものになるのではないか、という話だったんです。

−−オープニング用のキャラクタモデルは、新規に作り直されているものなんでしょうか?

後藤 そうですね。

日下部 基本的には、プレイヤーの方々が親しんでいるのはゲーム中のモデルなんで、違うものにならないように、ゲームのものを元にしながら、ディテールアップをしていきました。ゲームで表現できない髪の毛の表現などを置き換えて細かくしたりとか、そういう作業ですね。

後藤 ゲームモデルは、少ないポリゴン数でいかに見せるかというものですよね。ムービーの場合は、ゲームでは見られない角度とかも出てきますし、それぞれのモデルを作っていた人にしてみると、難しかったようです。

鈴木 結局、それぞれに一番格好いいイメージが頭の中にあるんですよ。そこを抽出してやらないといけなかったんだと思うんです。ある程度作りこんでいって、それがいろんな角度で「どうだろうね」って話になるんですけど、最終的には「ム−ビーのカメラの位置に合わせたときに一番格好良く見える」という方向性になりました。ゲームの実機のイメージからなるべく離れないように作業していってもらったんですが、そこが大変でしたね。揉めましたね(笑)。揉めたというか、お互いの持っているイメージが一緒じゃない場合があったんで。

−−それぞれの「格好いい」基準って、違いますから。

恩田 私達はゲーム制作の視点で見ることしかないので。打ち合わせの最初に、ゲーム的な視点でのお話をして、あとはビルドアップさんと試行錯誤しながら進めていった、という感じです。かなりいろいろ無理なお願いをしてしまって。

−−無理っていうと、どのような無理ですか。

恩田 「ここへきてそんなこと言うか」っていうことなどですね、もういっぱい。


■「ソウルエッジ」のころからあった「The Watcher」の設定

−−資料によると、今回はウォッチャー(The Watcher)の視点で描かれているようですが?

日下部 「SCII」の主人公が決まっていない、それが事の発端ですね。

恩田 前作では、キリク、シャンファ、マキシがいたんですが。キリクを一番押していたんですけど……。「SCII」では主人公がいなかったんで、「何を描くか」っていう話になると、描きづらかったと思うんですね。

後藤 描きづらかったですね。

恩田 ですので、当初結構迷ったんですが、PS版「ソウルエッジ」のオープニングムービーのときからあった「ウォッチャー」の設定をやってみようと思ったんです。もともと、ソウルエッジの所有者だったセルバンテスが、1匹のカラスを従えていて、いろいろな情報収集しているという設定で絵コンテを描いたことがあったんです。当時はボツりましたが(笑)。それをずっと忘れてたんですけど、ふと思い出して後藤さんにお話ししたんです。

 PS版「ソウルエッジ」のオープニングムービーのリ・ロンの川下りシーンで、鷹のような鳥が出てくるじゃないですか。あれもウォッチャーなんですよ。

−−あれもウォッチャーなんですね。

恩田 そうそう、全部ウォッチャー(笑)。そういう意味では随分前からプロットはあったんです。

後藤 そうだったんですね(笑)。

恩田 すべて今回のための伏線だったんですよ! …… ということにしちゃったと。

−−オープニングを作るっていう話になって、メインの構成や今回のテーマは、どちらが提案されたのでしょうか。

恩田 まずは、原作者である我々の方から、シリーズの物語やキャラクター設定をベースに文章レベルでアイディアを作って、全体のイメージを提案しました。それを調整していただきながら、具体的なシーン作りは後藤さんが。何度も描きなおしていただきながら、でき上がってきましたね。

後藤 そうですね。最初はそのキャラクターのバックストーリーを頂いて、そのおいしいシーンを見せたいということから始まったんですけど、それぞれ長いですよね、バックストーリーが。それぞれの因縁とかがあって。その辺をどうつまんでいけばいいのかなというところと……さっきも話にありましたけど、主人公的位置付けのキャラが明確に設定されていないので、全体としてのつながりをどうしようか、といったときに、先ほどのウォッチャーの話があったんで、「これいいよね」と。

恩田 キャラクターを全部描いてしまうと、「見どころ」がぼやけるかなと。何の物語なの? 何の視点なの? という意味合いを明確にするために、ウォッチャーに出てきてもらったんです。

内山 あとはわりと、絵コンテを作る段階から、アクションのところはこだわられてましたね。

恩田 タキ対アイヴィーのシーンと御剣対鉄砲兵のシーンは、特にこだわりました。シリーズのストーリーを作成しているのは中川というスタッフなんですが、前作のテキストアドベンチャーを製作した影のストーリーテラーに石黒という「裏」担当者がいるんです。今回はプロジェクトメンバーとして関わってはいないのですが、シリーズを構成する上において困ったときは、ことあるごとに彼に相談してます。

 今回も、映像のネタについて休日に飯を食いながらたくさん話しました。タキとアイヴィーの2人は、形は違えど、お互いソウルエッジの影響を受けた武器を持っているので、少なからず因縁関係があります。前作でも、石黒が作ったテキストアドベンチャーにおいてこの2人は絶妙な絡みを見せていたので、この2人の微妙な関係にはプレイヤーの皆さんにも注目していただきたかった。「大人の女性同士の避けられない闘い」という部分まで表現できればと。

 御剣は「鉄砲兵と絡ませたい」というイメージが先にあって、石黒から「それだったら水の上がいい」と勧められました。足場の悪いところでのバトルはおもしろいし、いかだを渡って最後、「ズバーン」といく感じがかっこよくイメージできたので、「なるほど」とビルドアップさんに提案させていただいたんですよ。でも、「いかだの上を飛ぶって無茶苦茶大変だな」とか後になって思ったんですよ。

後藤 大変でしたね。

恩田 「それ大変ですよね」って言いましたよね? 「コレじゃなきゃ困ります」とは言ってないですよね(笑)。

後藤 水上で、走ってパンパンいくっていうところは「見てみたいな」とは思ったんですよ。面白いだろうなと。

恩田 地面の上を飛んで、バーンって飛んで斬るだけでも大変なのに、水でクッションになって船が「ウワン」っと沈むときの飛び方とか、飛びの高さとか、「どうなるのかな?」と思っていたら、うまく見せていただいて。

−−「あのシーンは凄いな」と、「むちゃくちゃ大変そうだ」となんとなく感じていましたが……。

恩田 普通に「戦の中をかいくぐって行く」というシチュエーションよりはよかったかもしれませんね。

後藤 そうですね。

恩田 実際弓とか飛ばしていますし、「戦争な感じ」というか、行っちゃいけないとこまで御剣が行って、「バーン」と闘っている感じは出てると思うんですけどね。

 あと、前作のドリームキャスト版のとき、本当はムービーをやりたくて、絵コンテまで作ったんですけど、できなかったんです。そのときにやりたいと思っていたことが、もしかしたら今作のアイデアに入っていたかもしれないです。DC版でできなかったことを、恨みじゃないけど、それをビルドアップさんに晴らして頂いたという。

−−具体的に作り出す前からいろいろやり取りされて、制作最中にも物量が増えてるわけじゃないですか?

後藤 そうですね、もう、あの……全体の尺が増えてるんですよ。こちらの都合でもあるんですよ。当初は2分だったんですが。

恩田 2分でしたね(笑)。

後藤 結局2分半くらいになってるんですよ。

−−それも、メインキャラが出てるだけで10体以上モデルがあって、シーンもそれだけ全部違って。すごく大変なのではないかと思います。同じセットで使いまわして引き伸ばして使えば楽になるものが、背景からなにから全部違うものが入ってるわけですから。

恩田 すいません。あの、頭の霧の部分とか、タイトルロゴが決まってからも、何だかんだで長くしていただいてしまいました。皆さんにご迷惑をおかけしっぱなしでした。


■ ムービーとサウンドのシナジー効果も

−−中鶴さんが曲を作られたのいつくらいだったんですか?

中鶴 ちゃんと形にしたのは、結構後のほう、秋くらいですね。今まで恩田とよく予告編とか作ったときはだいたいの構成があって、いつも彼は盛り上がり曲線というのを書いて、「こうなってこうで、こうなんですよ」っていうのにあわせて曲を作るんです。あとは絵を合わせてもらうという、曲先行のパターンですね。

 今回のムービーも「曲先行で作って、絵を合わせてもらうという形にしたほうがいいのかな」と思ったんですけど、せっかくの機会なんで、違った方法も試してみようかと。じゃあ、「絵を先に作ってもらって、音を合わせるというのはどうかな」とか。カンパケの音に合わせていただくか、絵にこちらであわせるか、相談する余地があったので、じゃあ、絵にあわせるような形でやっていこうと、最初はまとまったんです。

 たぶん、ビルドアップさんの立場でしたら「早く音のイメージくださいよ」という思いもあったと思いますし、僕は僕で、「絵コンテでもあったら作れるのにな」って。結局そんなこんなで、結局、先に絵コンテを出していただいたんですよね。

後藤 そうですね。

中鶴 大体の尺が分かったので。ある程度大きく分けて、シーンごとに違う要素も入れて、1本筋が通っている形にまとめようといろいろ構成して、たたき台になるものを提出したのが(2002年の)10月とか11月くらいだったと思います。ラファエルのシーンは、絵コンテを見せてもらった段階で、ここは思いっきりガタッと落として、全然違うテイストで、一回がらっとシーンを変えて、それから次に進むといいなと。そこだけは、絵を見た瞬間にすぐわかったんで、ここは違うことをやろうと。それでガットギターを意図的に入れてみました。

 作っていて、最後の最後までどういう風にまとまるのかは僕自身にも見えなかったです。絵のクオリティーがどんどん上がっていくにつれて、「だったらこれを変えようか」とか、「冒頭でナレーション喋らせたいんでちょっと時間ひっぱってもらえませんかね」とか、作りながら変化していきましたね。

恩田 「ソウル」シリーズはいつも冒頭に「Trancending history〜」、それから最後「The legend will never die.」の2つのメッセージが入るんですが、今回声優さんの声を録らせていただいたにもかかわらず、どこにも入れる予定がなくて。オープニングムービーに入らないと、どこにも入る場所がないので、「申し訳ないですけど」と無理やり入れてもらったりしましたね。


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