2003.5.12



































「ソウルキャリバーII」特別インタビュー
家庭用オープニング制作者に聞く Part2


■ 現実とイメージのギャップをどう埋めるかはセンスとノウハウ

−−ところで、今回のムービーはモデルもモーションもすごくキレイで、存在感を感じますね。

恩田 人体のモデルを使って、人体の動きをさせるということは、CGで一番難しいことだと思うんです。例えば一流のハリウッド映画でさえも、人体をちゃんと扱っていない。おもちゃだったりとか恐竜とか、今まで人間が見たことないものをCGで動かしていれば、それをなんとなく「リアル」だと思ってしまう。それを、本当に人間を描いてもらうっていう点では、すごく難しい仕事をしていただいたと思うんです。しかも武器を持っていたりするんで。

−−プロポーションも違いますし。

恩田 そうそう。今回私がユーザーであるお客様に一番見てほしいのは、表情! すごく人間臭いところが全般にわた渡って出ていると思うんで。ユンスンの振り向きざまの瞬間の表情とか、カサンドラが上を見上げて目が動くところとか。

−−カサンドラは大評判ですね。ファンのページや掲示板を見ていると、すごい反響だったのがわかりました。ゲームモデルも、本当の人体のプロポーションから言うとちょっと違いますよね。それが、違和感なく人間っぽく動いてるあたり、大変だったんじゃないかと思いました。

後藤 実は人間ができない動き、ありえない動きをしてるんです。それを破綻しないように見せるのが、難しかったですね。アクション的にいうと、あんな動きのできる人間はいないですから。そのあたりを、流れの中で違和感なく表現するのが大変でしたよね。タキとアイヴィーのところは特に。

鈴木 そうですね、キャプチャーデータも撮ったんですけどね。

日下部 例えば、剣を振ってもらっても、やっぱり全然遅いんです、実際の動きは。それを3倍4倍の速さに「ピシュッ」と。走ってて剣を振るのも、(動きが)ブレるんですね、よっぽどの達人じゃないと。すごくうまい人にやってもらって、キャプチャーデータはモーションのベースにはなってますが、それでも削ったりしました。

恩田 ゲーム本編のほうでもそうです。キャプチャーしても、かなり手を入れなきゃいけないんです。演武でも、よく「ナムコさんすごいモーションキャプチャーのシステム持ってるからいいですね」って言われるんです。それってかなり悲しい誤解なんですよ。最終的にはほぼ全部手打ちでの修正が入ります。実際のデータそのままとか、微調整レベルでは済まない「職人の演出」があって、ああいうモーションになりますね。

中鶴 音もそうです。セリフとかを普通の尺で喋ると、遅れてしまうんです。動きがせっかく速いのに声だけが普通のテンポでしゃべっていたら、絶対間延びしてしまうので、SEも少しだけ「巻き」でやってるんです。ほとんどど気が付かれないようにやってますけど。

日下部 ユンスンのところとかも、カメラに合わせて、飛び降りるモーションを撮ったんですけど、かなり直して、変えてという感じでしたね。撮るときに、高いセットを作るのも、飛んでもらうのも大変なんですけど、「それだけの効果が出るか?」っていう所もありまして。

−−人体はメカものとは違う難しさがあると思うんですが? 具体的にはどの辺がキツかったとか、難しいんでしょうか?

後藤 頭の中にあるイメージをそのまま映像に定着させるのは大変でした。例えば、CGだと「理屈で考えるとここはこういう動き」というものを、そのまま作っても格好良くはならないんですよ。今回、最初の方にも話したんですけど、「2Dのアニメーション的な“けれん味”の画面構成で、動きもデフォルメした感じを基本にしよう」と頭にあったんで。

 人体の動きとしては、絶対できない動きをやってるんです。御剣とかのシーンにしても、走りながらこんなこと(袈裟斬りを真似ながら)できないんですよ。役者さんに演じてもらったんですけど。「ジャンプして空中で斬って、また走っていくってできますか?」って言ったら、「できない」って言われて(笑)。

日下部 斬る動きが2回ありますけど、結局、1回ずつ分けてやってもらいました。

後藤 2Dのアニメーションだと描いちゃえば済んでしまうんですけど、そういう訳ではないんで。それをどう見せていくかが難しかったですね。あとは、タキが壁を蹴って空中を飛んでいきながら、パンパンパンって剣を弾く。あそこが大変だったんですよ、スピード感が出ないんです。

鈴木 2階建てくらいを飛んでるんですかね、確か。

後藤 2階建てを倍重ねにした、4階建てくらいのビルの高さをを飛んでるんですよ、実際は。それでやっと、あれだけのスピード感が出せて。あそこは大変でしたね。

恩田 「現実の人間のジャンプだとこうで」って計算でやってると全然ダメってことでしょうね。

後藤 そうですね、ぬるーっとしちゃいますね。いわゆるアニメーションでは、「流パン」の背景を敷いちゃえば済む処理なんですけど、3Dだとそういう訳もいかないんで。

鈴木 実は、多少はそれも取り入れて、ちょっと嘘ついて、背景を横に流してるんですよ。それで多少のスピード感アップはできたんじゃないかと。

恩田 その辺は、実写の映像も含めていろいろ制作されているビルドアップさんだからこそ、やってもらえたのかなと。……あそこは揉めましたよね。

後藤 揉めましたね。

恩田 タキがジャンプしてるシーン、たぶん頭の中に描いてるのは一緒なんですよ、みんな。でも、なかなかそこまでにはいかなくて。

−−その辺が、イメージと、実際の映像の定着のギャップなんですね。

恩田 そうですね、ギャップを埋める作業を巧妙にやっていただいて。ビルドアップさんしかできなかったような気がします。終わってみて。

中鶴 そこはノウハウと経験ですよね。

恩田 ビルドアップさんは、立体造形なんかも手がけていらっしゃるので、ひとつひとつのモデルの見せ方とか、さすがです。「この角度から見せるキリクが一番いいんですよ」というのも、もともと想定していたものとは別の形だったのですが、実際に見せていただいたものに独特の説得力があって、「確かにこっちの方がいいですね、これでいきましょう」というお話を何度もした記憶があります。

 その辺は、ビルドアップさんのセンスのお陰です。ゲームの畠にはないノウハウを持ってらっしゃるんで、そのあたりがうまく融合できたのが、今回のムービーだと認識しています。

−−もうちょっと実写っぽいテイストなのかなって思ってたんですよ、動きとか。わりとフィルム撮りっぽい、実写っぽいものなのかと思っていたら、意外とアニメチックな演出がまぶしてある感じがしました。

恩田 ゲーム自体が、異常なスピード感じゃないですか。実際にあんな風に闘えないし。今回のムービーのような演出された映像を実写っぽく作っちゃうと、もったりしちゃう。それこそキャプチャーでとってきたデータを、そのまま入れるような感覚でやっちゃうと、全くスピード感が足りなくなってしまうんですよね。

後藤 違う方法論だったら、できたと思うんですよ。例えば主人公がいて、その主人公だけを追っていくみたいな内容だと、その尺の中にかなりリアルな動きが要求されると思うんです。

 今回はとにかくスピード感とテンポとが最重要だったと思うので、1カット1シークエンスずつは短く、その中で「どうそれぞれを格好良く見せるか」というのがポイントだったんです。そうすると、みなさんの頭の中にあるアクションもののイメージは、日本人じゃなくても最近そうなのかもしれないですけど、アニメーションの映像なんですね。それって、根底にDNAの中に刷り込まれちゃってるくらい、あると思うんですよ。

恩田 無意識のうちにそういうの、期待する感覚ありますよね。

後藤 作ってる自分達もそうですから。だったらそれをCGの方に単純に置き換えるわけじゃないですけど、そういう味みたいなのが出せればいいのかなって。それが逆に狙いでもあったんですけど。

恩田 最近の映画のアクションシーンでも、「演じてる俳優がアクション俳優じゃないから」っていうのもあるんですけど、カメラがすごく寄ってますね。上半身だけで刀でガンガン切り合うような。先日見たある映画でも刀と刀で切り合うシーンがあったんですが、2人の俳優の上半身がギリギリ入るくらいの構図にしてるんです。全身を写しちゃうと、ちゃんとアクション出来てないのが分かってしまうから、できるだけ寄って画面がずっと動いている演出にしちゃってる。

 ああいう見せ方って、言い方は強引かもしれないけど、「アニメっぽいかもしれない」と思うんですよね。そういう感覚から言うと、後藤さんが言われるように、「アニメ的な演出」が普通なのかもしれません。「期待される映像ってどんなものか」を分析すると、こういうタイプの映像になるのかもしれないなと思います。


■ 「すごい雷」

中鶴 効果音をつけるときもその話はしましたよね。

恩田 そうですね。

中鶴 全部リアル思考で、とにかく絵にあわせてそこを説明するSE(効果音)をどんどん入れると、すごくリアルな映像とかSEになるんだけど、結局、見ていてつまらない。それよりは、全ての事柄に音をあてるんじゃなくて、要所要所、ポイントになる音に焦点を絞って、しかも本物の音である必要は全然ないんですよ。もっと効果音的な音だったり。恩田が製作中によく言ってたんですが「楽器的なSEの扱い」とか。

 最終的にはそういった方向に持っていったんですけど、作ってる途中は結構迷ってたんで、「とりあえず全てに音を充ててみて、そこから省いていくのがいいのかな」というような試行錯誤もありました。

恩田 あと、金子君がやったアレ。ネクリッドのシーンに行くときに、雷がバーンと鳴るんですけど、命がけで撮って来た音。

−−何ですか、命がけって?

中鶴 SE担当の金子は、よく野外で音を収録してるんですね。雷が鳴るときは、雨が降り出しちゃうと雨の音が入っちゃうので、雨が降る直前がいいらしいんです。ある時、「雷が鳴りそうだ」っていうので、ビルの屋上に行ってマイクを構えていたらしいんです。そうしたら、真後ろのビルに雷が落ちたらしいです。

一同 (笑)

中鶴 ほとんど真後ろ。もうものすごい音がして、怖くて声も出なかったらしくて、結果的にいい音が録れたらしいんです。びっくりして声出しちゃうと使い物にならないですから。すごく近くでむちゃむちゃいい音が録れたんですよね。彼は「自信作だ」って言ってました。命と引き換えにとまではいかないですが、「入魂の雷音」なんでみなさん聞いてください。

恩田 その話を聞いてからあのシーン見ると、違うんですよ。「確かにすごい雷だ」って。


■ 「またいずれ一緒にお仕事させていただければ」

−−みなさん、ご自分が関わられたパートでも、どこでも、オープニングに関して「ここは気合を入れたので、見て欲しい」というところがあったらアピールをお願いします。

日下部 全体的に目を通したんで、どこも全部苦労したなと。でも、僕としては、キャラクターの顔を起こすときに、少し変えたかったんです。もともとのゲームモデルよりも、作りこんだものにしたかったんですけど。そのあたりを見た人達がどう思ったのかな、というのが正直気になるところではあります。ほとんど変わってないようなキャラから、実は変わってるものからいろいろあるので、そこが僕としては気になるところです。

−−御剣とか、結構顔が変わって見えますね。もともと動かないところまでを動かすわけですから、当然イメージが変わっちゃう可能性はあると思います。でも、個人的には違和感は感じませんでしたけど。

日下部 そう言っていただけると嬉しいです。その辺りが苦心したところですね。

内山 鈴木さんは、アイヴィーとか、あの辺のアクションをずっとやられてましたよね。

鈴木 Xbox版のスポーンを見てくれる人が多いと嬉しいなって思います。自分が直接手がけた作業が、スポーンとアスタロスだったんで、スポーンを見てくれる人が、何人いるかなーって個人的には気になってます。

恩田 オープニングムービーは、意図した通りのことを全て、2分半で飲み込んでくれる人は居ないと思うんで。何度も見てもらって気づかなかったところに気づいたり、自分の中でストーリーの補完してもらったりっていうのがあっていいと思うんです。例えば、ネクリッドのシーンだって、あれだけで全部ストーリーをわかってくれというのは無理なんですよね。

後藤 それは無理ですね。ネクリッドだけで全部の尺が欲しいですね(笑)。

恩田 ネクリッドのシーンだけでも2分なんて軽く行きそうですね。ちゃんと作ったストーリーの一部しか見せてないわけですから。映画の予告編でもそうなんですが、このシーンとこのシーンは、本編ではつながっていないんだけど、あたかもこういう会話をしたかのようにしてあって。それがまたドキドキするような流れだったりするじゃないですか。そんな位置付けで、誤解してもらうのは、いいんですよ。

−−そういう意味で言うと、アイヴィーとタキは長々と見せてもらえて、分かりやすくていいのかなって思います。まぁ前後の繋がりは分かりませんが。

恩田 あそこだけ、カット2つに分かれてるんですよね。

後藤 そうですね。あのシーンは、思い入れがたっぷりあるシーンということで、いっぱい見せたいと。

−−破片が飛ぶのにびっくりしました。「すげー、ついに飛んでっちゃうよ敵の方まで」って。

恩田 あの技無いんですよね(笑)。ホーミングしてますしね。

後藤 あの技は無いんでしたっけ。

恩田 似たものはあるんです、マイト アトラスと、クリミナル シンフォニーというんですが。 

後藤 広いところでやれば、きっとああなるんですよ(笑)

−−最初見たとき、「この技使ってみたいなー」と思いました。

恩田 それ言っておきます、プロジェクトに(笑)。タキのラストの技もないですね、あれは使うと体力がごそっと減るんで使えないんです。きっと。

一同 (笑)

−−そういうゲームにない動きがあるのは、個人的にはいいなと思います。

中鶴 あれは逆にムービーでしか見られない。

恩田 ホントはあの技も入ってて、「この技を俺は使うんだ!」みたいな感じだといいなと思うんです。マキシとアスタロスのシーンはそうですよね。壁に打ち付けられるっていうゲームの仕様と、避けて攻撃っていう動きが入っている。

−−横斬り、「夜光虫」ですよね。あそこはゲーム的仕様がもりもり入ってるんですね。

恩田 そうですね、ホールドと避けと。そういう形にしてもらいました。今度は、カウンターヒットとか、微妙なやつ入れますか。ソウルチャージとか。ちょっと貯めるとか、8WAY RUN中何とか、とか。

中鶴 チュートリアルになっちゃいますね。それだと(笑)。

−−マキシとアスタロスはセットですね。因縁バトルも、長いし。

恩田 あの2人は「様式美」にしていかないと。「今回はどう絡むの?」という。今度はもうちょっと余裕のあるスケジュールで、それこそ、オープニングとエンディングとあればいいですよね。

内山 もっと音と絡めてやりたいですね。

恩田 最近の映画のエンドクレジットって、すごい格好いいじゃないですか。「トリプルX」とか、「ハムナプトラ」とか。なので、旅の終わりみたいなのが描ければいいな、と思います。そういったものを、ビルドアップさんと一緒に創り上げられるといいなと。今回のノウハウとか、どんな話が、“こんな”時期に来るのかってわかって頂いたと思いますんで(笑)。

 私ももうちょっと事前にお出ししようと思いますし。また、次にご一緒させていただくときは、「ステップアップした映像を作っていただけるだろうな」という、見えないものに対する期待もあります。「またいずれ一緒にお仕事させていただければいいな」と個人的には思ってます。

後藤 ありがとうございます。

 −−ビルドアップの皆さんは、ナムコさんとお仕事するって、どうだったんでしょう?

後藤 ありがたいです。

恩田 今、棒読みでしたよ(笑)。「明朝体」みたいになってました。

後藤 いや、でも面白かったですよ。まぁ、大変は大変だったんですけど。

内山 やりごたえありました。

恩田 自信を持ってユーザーの皆さんにお見せできるものを仕上げられましたが、まだまだやり残した部分があるような気がします。機会があれば、ぜひまたナムコとビルドアップさんでタッグを組ませてもらえればと思います。でも、今回かなり無茶なお願いをたくさんしてしまったので、「次の仕事なんかやるかー!」って思われてると思うんですけど(笑)。

内山 そんなことはないですよ(笑) また次も何かありましたら是非お願いします。

−−本日はどうもありがとうございました。


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